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2007年6月22日 (金)

コラム、『転換期を迫られるガナーズ 〜06/07シーズン アーセナル総括〜』

Arsenal_logo_6  マンチェスター・ユナイテッドとの2強時代といわれた90年代後半から今世紀当初、国内においては無類の強さを発揮し、03/04シーズンには115年ぶりの無敗優勝をリーグ戦で成し遂げたアーセナル。しかし一時代を築いた彼らにも、ディーン氏退団の影響で大きな転換期が訪れようとしている。

 ガナーズの愛称で知られるアーセナルは、プレミアリーグを代表するチームとしてこれまでに国内リーグで13回の優勝を誇る。96年から指揮を執るべンゲル(フランス=57)のもと、国内で数々のタイトルを手中に収め、近年はビッグ4にもその名を連ねている。しかし活躍の舞台を欧州まで拡げてみると、同じビッグ4に名を連ねるリバプールやマンチェスター・ユナイテッドに比べて、その実績は遠く及ばない。これまでのアーセナルは、欧州の舞台で結果を残せてこれなかったのである。
 しかし、そんな彼らが昨季の欧州チャンピオンズリーグで準優勝の結果を残し、これまでの連続無失点記録を塗り替えるという偉業も成し遂げた。この結果は選手やクラブに大きな自信をもたらし、これまで抱えていたある種のコンプレックスからも解放されるきっかけとなったはずだ。特に若い選手を多く抱えるアーセナルにとって、この結果は将来に向けた貴重な財産と言えるだろう。
 アーセナルは即戦力になるようなビッグネームの獲得は行わず、将来が有望視される若い選手を中心としたスカウティングに力を入れている。時折、その方法は議論の対象ともなるのだが、その行動は常にチームの将来を見据え、チーム全体の底上げを計ることにも繋がっている。
 今季のカーリングカップもその意識の表れと言え、若い選手に経験を積ませることを目的としたチーム構成が見られた。そして若い選手を中心としたアーセナルは、期待通りの成果を収めたのである。結果的にタイトルこそ逃がしたものの、準優勝の結果はアーセナルの将来を担う若い選手たちに十分な自信と経験を与え、同時にチームの底上げにも成功したと言える。しかしこの大会で魅せた若手選手たちの活躍こそ、今季のアーセナルにとって一番明るい材料でもあった。

 チームの本拠地として、93年もの長い時間をハイバリーで過ごしたアーセナルは、今季より7年の歳月と750億円にも上る総工費をかけたエミレーツ・スタジアムに本拠地を移した。心配されたアンリ(フランス代表FW=29)の残留にも成功し、昨季の欧州チャンピオンズリーグでの結果に自信を深めた選手たちは、本拠地移転元年を高いモチベーションで臨んでいるはずであった。
 しかし記念すべきリーグの開幕戦をホームで引き分けるなど、チームは序盤戦で躓いた。4試合目のマンチェスター・ユナイテッド戦でようやく初勝利を挙げ、その後は4連勝を記録したものの、ここまでの試合内容にはどこか不満が残るものだった。後にシーズンを通しての課題にも挙げられるが、先制点を与える展開が多く、決定力を欠いた内容には、見ている側にとっても我慢を強いられる試合が続いた。その後もこのような不安定な状態は続き、11月にはリーグ戦5試合で勝ち点が僅か4しか得られない結果にまでに陥る。この結果は優勝争いから事実上の脱落を意味し、本拠地移転元年に不甲斐なさを露呈するシーズンとなった。
 期待された新スタジアムでの効果も存分に発揮したとは言いがたく、今季のリーグ戦におけるホームでの勝率は約63%、勝ち点は42に留まった。この数字は過去5年間における成績では最低の数字で、成績よりも本拠地移転に伴うクラブの収入面に効果が見られた。こうしたホームでのアドバンテージが活かせなかったことに加えて、昨季から続いているアウェーでの成績がさらに彼らを苦しめている。
 今季、優勝を果たしたマンチェスター・ユナイテッドのアウェーでの成績は、13勝3敗3分けの勝ち点42を挙げているのに対し、アーセナルのアウェーでの成績は7勝7敗5分けの勝ち点26である。昨季のアウェーでの成績は6勝9敗4分けの勝ち点22であり、昨季に比べて微増はしたものの、どちらも勝率に直せば4割にも満たない。さらに特筆すべきは、ビッグ4同士による当該成績では勝ち点11を挙げている点だ。この数字は4チーム中で一番の成績であり、それだけに他チームとの対戦で取りこぼした勝ち点が悔やまれた。

 今季のアーセナルは若手選手の台頭が目立った。今日のチームを構成している若手選手たちの才能は、近い将来アーセナルが再びリーグの頂点に駆け上がるためには欠かせない存在でもある。しかしベルカンプ(元オランダ代表FW=38→引退)やピレス(元フランス代表MF=33)、キャンベル(元イングランド代表DF=32)などが抜けた今季、アーセナルは怖さに欠けているように感じられた。試合展開を優位に進める一方で、取りこぼしが指摘される結果となった理由はどこにあったのであろうか。
 考えられる点の一つには、チームに精通した経験豊富な選手の不在によるものである。べンゲル政権が11年を数える中で、チームの黄金期を知る選手は次々とチームを去っている。代わりに毎年新しい選手が加わることになるが、戦術の理解を浸透させるまでには多くの時間と経験が必要だ。今季の先制点を奪われる展開が目立ったこともこの点を裏付ける結果の一つではないだろうか。チームに精通した経験豊富な選手の存在は精神的な役割も大きく、若手選手や移籍間もない選手たちが多い状況下では、なおさらこの存在が大きいと考えられる。
 今季のアーセナルは試合の主導権を握り、優位に進めながらも勝ちきれない試合が多く見られた。それは黄金期を知る選手が次々と去ったことによる、チームとしての熟成度の低下を意味し、怖さを欠いたアーセナルの原因となったのではないだろうか。

 アーセナルは近い将来、決断を迫られることになるだろう。それはディーン氏がクラブを退団したことにより、早ければこの夏にもチームへの影響が出てくることが懸念されているからだ。    
 今日のプレミアリーグには、アーセナルを除くビッグ4はおろか、下位チームにも外国資本の手が及んでいる。海外資本導入に反対した幹部たちの意図がどのようなものなのかはわからないが、べンゲルをチームに招いたのもディーン氏であり、そのべンゲルを慕って集まった選手も少なくないのが現状でもある。
 海外資本の導入はファンにとってもデリケートな問題でもあるが、アーセナルには転換期が迫っている。べンゲルとの契約は残り一年で、それ以降はどのような方向にチームを向かわせるのだろうか?ディーン氏退団後の体制をこれまで通りとは考えにくく、べンゲルが再契約に合意するかは大きな疑問である。仮に再契約となっても、これまで通りのスカウティングには不安を残し、新戦力によるチームの底上げを図るには時間を必要とするだろう。改革に着手すれば資本導入も考えられるが、チームが様変わりする可能性もあり、何よりこれまで掲げてきたチームのスタイルを捨てることにもなりかねないのである。
 現在7チームの海外資本がプレミアリーグには存在するが、今後も増える傾向が予想される。特に下位チームに新たな資本参入ともなれば、アーセナルの現在の位置を脅かす存在が増えることにも繋がる。そしてそれを今季のアーセナルの成績に例えれば、欧州チャンピオンズリーグの出場権を失うことも考えられるのだ。
 いずれにせよ来季のアーセナルからは、ピッチ外でも目の離せないシーズンになるだろう。しかしそれ以上に興味深いのは、来期以降のクラブの選択であり、それは将来のリーグ勢力図をも左右することになるかもしれない。

 Written by MA-

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